
この記事をおすすめする人
・色彩検定3級を勉強中の人
・基礎を見直したい色彩検定2級・1級を勉強中の人
・色の視覚的なはたらきについて興味のある人
この記事では、『色の視覚効果』について解説します。
赤字部は重要なので、色彩検定を受ける時には覚えていきましょう!
色の視覚的なはたらきについて説明しているので、色彩検定を受けない人も興味のある人は読んでみてください。
※この記事は2025年時点の色彩検定3級の出題範囲を参考にして作成しています。
- 色のはたらき
- 光と色
- 色の表示(表色系)
- 色彩心理
- 色の心理効果
- 色の視覚効果←この記事の内容
- 色彩調和
- 配色イメージ
- ファッション
- インテリア
- 慣用色名
1.色による視覚的なはたらき
色は隣り合ったり、重なったりすると色同士が影響を与え合って一つの色を見るときとは異なる見え方に変化します。
このような色の視覚的なはたらきを色の視覚効果といいます。
色の視覚効果には対比、同化、面積効果、主観色があります。
それぞれについて説明していきます。
2. 対比
隣接する2色の差が強調されて見える現象を対比といいます。
対比には隣接する色のように空間的に近い色の間で生じる同時対比と2色が時間的に接近しているときに生じる継時対比があります。
さらに、色の三属性の属性(明度、色相、彩度)が最も変化して見えるかによって明度対比、色相対比、彩度対比に分けることができます。
ただし、色の三属性の対比は複数の対比が同時に起こる補色対比、色陰現象、縁辺対比があります。
それぞれの対比について説明していきます。
- 同時対比
- 継時対比
- 明度対比
- 色相対比
- 彩度対比
- 補色対比
- 色陰現象
- 縁辺対比
2-1. 同時対比
隣り合う色の影響を受けて、見ている色との違いが強調されて見えることを同時対比といいます。
同時対比は色の三属性のいずれの属性の変化がみられるかによって明度対比、色相対比、彩度対比、補色対比、色陰現象、縁辺対比に分けることができます。
2-2. 継時対比
前に見た色の影響で、後に見た色との違いが強調されて見えることを継時対比といいます。
例えば、青い光の部屋の中に長くいた後に白い光を見ると、黄色っぽく感じるような現象です。
また、補色残像も継続対比による現象です。
継時対比は色の三属性のいずれの属性の変化がみられるかによって明度対比、色相対比、彩度対比、補色対比、色陰現象、縁辺対比に分けることができます。
2-2-1. 補色残像
補色残像とは、ある色を見つめた後に目を離すと見える残像のことです。
下画像の赤いハート型がある左側の黒点を30秒ほど見つめた後、右側の黒点に目を移してみてください。
右側にぼんやりと青緑色のハート型の補色残像が見えてくるはずです。
この残像が青緑色に見える理由は、赤色の心理補色が青緑色だからです。



心理補色はPCCS色相環の書く時にも使われます。
⇒PCCS色相環の書き方についてはこちら。
2-3. 明度対比
明度の違う色が組み合わさった時、色の明度差が実際よりも大きく感じられることを明度対比といいます。
例えば、同じ灰色でも、明度が高い灰色が背景だと暗く、明度の低い灰色が背景だと明るく見えます。

また、明度対比は『無彩色 x 無彩色』『無彩色 x 有彩色』『有彩色 x 有彩色』のどの組み合わせでも生じます。

2-4. 色相対比
色相の違う色を組み合わさった時、色の色相差が実際より大きく感じられることを色相対比といいます。
例えば下図のように、真ん中の円が黄色で背景色が橙色の場合、橙色の心理補色である青色方向に色味が引っ張られて、黄色い円は青みが増して見えます。
そして、真ん中の円が同じ黄色で背景が黄みの緑色の場合、黄みの緑色の心理補色である赤みの紫色方向に色味が引っ張られて、黄色い円は紫みが増して見えます。
この色相対比は彩度が高い方が効果が高くなります。

2-5. 彩度対比
彩度の違う色を組み合わさった時、色の彩度差が実際より大きく感じられることを彩度対比といいます。
例えば、真ん中の円が同じ黄色でも背景色の彩度が低いと、円は鮮やかに見えます。
背景色の彩度が高いと、円はくすんで(無彩色に近づいて)見えます。

この彩度対比は背景の彩度が高くなるにつれて円はくすんで、低くなるにつれて鮮やかに見えます。

2-5-1. 補色対比
色相対比で組み合わせる色が心理補色の2色の時、実際より鮮やかに感じることを補色対比といいます。
補色対比は実際より彩度が上がっているように見えるので、補色による彩度対比ともいいます。
色相対比と彩度対比が同時に生じることで起こる現象の一つです。
この補色対比は2色の彩度がどちらも高いと、どちらも実際より鮮やかに見えるようになります。
これにより、色の境界がギラギラしてあいまいになるハレーションという現象が起きます。
下図は赤色と青緑色の補色を使った例です。
ハレーションは目を引く魅力的な配色を作ることができる一方で、目が疲れさせることもあるので、使う時はバランスが大切になります。

2-7. 色陰しきいん現象
鮮やかな色を背景とする灰色の組み合わせの時、灰色が背景の補色の色みを帯びて見えることが色陰対比といいます。
これは、明度対比と彩度対比が同時に生じることで起こる現象の一つです。
色陰対比の言葉の由来は、色のついた明かりの下で影(灰色)が光の色の補色の色みを帯びていたところからきています。

2-8. 縁辺えんぺん対比
2色の違う色が隣り合う時、境界線付近で明度対比が起こる現象を縁辺対比といいます。
これは、色相対比、明度対比、彩度対比のどの対比でも生じます。
特に、グラデーションの場合は縁辺対比が顕著で、同じ色でも明るい色に接する側はより暗く、暗い色に接する側はより明るく見えます。

3. 同化
ある色に別の色を少しずつ加えることで、加えた色に近づいて見えることを同化もしくは同化効果といいます。
同化には明度の同化、色相の同化、彩度の同化があり、それぞれ説明していきます。
3-1. 明度の同化
背景に明度の違う色を加えた時、もとの色の明度が加えた色に近づいて見えることを明度の同化といいます。
下図のように、灰色に白色を加えると灰色が実際より明度が高く(明るく)見え、黒色を加えると灰色が実際より明度が低く(暗く)見えます。

3-2. 色相の同化
背景に色相の違う色を加えた時、もとの色の色相が加えた色に近づいて見えることを色相の同化といいます。
下図のように、黄色の背景に赤色を加えると黄色が実際より赤みを帯びて見え、緑色を加えると黄色が実際より緑みを帯びて見えます。

3-3. 彩度の同化
背景に彩度の違う色を加えた時、もとの色の彩度が加えた色に近づいて見えることを彩度の同化といいます。
下図のように、ソフトトーンの赤色(sf2)の背景にライトグレイッシュトーンの赤色(ltg2)を加えるとソフトトーンの赤色が実際よりくすんで見え、ビビッドトーンの赤色(v2)を加えるとソフトトーンの赤色が実際より鮮やかに見えます。

補足:対比と同化
対比は組み合わさった色の面積が大きいな時に起きやすい現象です。
逆に、同化は組み合わさった面積が小さな時に起きやすい現象です。
例えば、下の図の灰色を見てください。
右側は明度対比により灰色が明るく見えますが、左側は明度の同化により灰色が暗く見えます。
つまり、近くで見ると模様(図)が大きくなって対比になっても、遠くで見ると模様(図)が小さくなって同化に変化して見えます。

4. 面積効果
同じ色でも、面積が変わると見え方や印象が変わることを色の面積効果といいます。
切手くらいの大きさから建物の外壁くらいの大きさの間は、面積が大きくなるほど明るくて鮮やかに見えます。
建物の外壁のような面積の大きいものの色を決める時、小さなサンプルを見て決めます。
この時、できるだけ大きなサンプルを用意したり、サンプルの色よりもやや低明度・低彩度の色を選んだりすることが好ましいとされています。

5. 主観色
白黒だけで描かれた図のはずなのに、何らかの色みを感じることを主観色といいます。
例えば、下図のような細かい白黒の縞模様は直角方向にパステル調の色の流れが感じられます。

この他にも、ベンハムトップ(ベンハムこま)の例があります。
この主観色の仕組みの詳細は分かっていません。
静止図の場合、図を見たときの微細な眼球運動が要因の一つと考えられています。
動的な図の場合、S, M, Lの3種類の錐体の反応速度の差が関係していると考えられています。
5-1. ベンハムトップ(ベンハムこま)
白黒でかかれたコマを回すと色みを感じることをベンハムトップ(ベンハムこま)といいます。
時計回りに回すと、中心の縞から順番に赤→黄→緑→青の色に近づいて見えます。
反時計回りに回すと、外側の縞から順番に赤→黄→緑→青の色に近づいて見えます。

ベンハムこま(最右図)の画像出典:Wikipedia
まとめ
『色の視覚効果』について説明していきました。
本文中の赤字部は全て重要ですが、「一度に全部は覚えられないよ」という人はまずは下のまとめから覚えていってください。
- 対比:隣接する2色の差が強調されて見えること
- 同化:ある色に別の色を少しずつ加えることで、加えた色に近づいて見えること
- 面積効果:同じ色でも、面積が変わると見え方や印象が変わること
- 主観色:白黒だけで描かれた図のはずなのに、何らかの色みを感じること
以上、最後まで読んでいただきありがとうございました!